対立抗争の嵐の中にあっても、ブッダが自覚した真実の自己のありようは、生き残っています。そのような仏教の歴史と現状を概観してみます。 ①ブッダ(覚者)の教え、つまり仏教は、紀元前7世紀頃、現在のネパールにあったシャカ国の皇太子が、出家修行し、真実の自己のありよう(法)をはっきり自覚したこと(悟り)から始まりました。その後、シャカ国は北インドの大国に攻め滅ぼされ、シャカ族は消滅してしまいました(ユダヤ民族とは違い)。 ②仏教は、インドのカースト社会各層に広まりました。紀元前3世紀頃インド亜大陸をほぼ統一したアショカ王は、仏教に帰依し仏教を保護しました。アショカ王 の治世下のマウリア朝は、世界初の大規模な仏教国となり、無料の病院が建設され無料の教育が施されたほか、平等・人権が促進され、 仏教はインド亜大陸全体に広まっていきました。 紀元前2世紀頃には、仏教は南インドやスリランカに広まりました。西暦1世紀頃には、海のシルクロードを利用する商人たち経由で東南アジアに広まりました。ヒマラヤ山脈を越えて、チベットに広まり、中央・北方アジアに広まり、シナ大陸に広まり、日本に6世紀頃伝わりました。 ③しかしインドでは、後のグプタ朝(西暦4〜6世紀)とパーラ朝(8〜12世紀)の時代に、仏教は衰退していきました。イスラーム勢力がインド亜大陸を征服していくに ともない、多くの僧侶がネパールやチベットに逃れました。インド仏教最後の砦となっていた僧院が、1203年にイスラム軍によって破壊された象徴的な事件がありました。僧侶は国外に逃れ、信者はヒンドゥー教やイスラム教に吸収されました。そして、13世紀、インドにおいて仏教はほぼ消滅しました。仏教が広まっていたインドネシア、マレーシア、ブルネイ、フィリピンもイスラム化されていきました。 ここでドーンと現代に飛んで、仏教徒が多い国の現状をまとめてみましょう。 ④中国仏教徒数約2億人:文化大革命で、極端な弾圧と破壊が行われました。宗教は阿片だとする中国共産党の強い統制下にあります。かつて唐代には、ブッダが自覚した真実の自己のありようが、シナでも修行者たちによって自覚されるようになりましたが、今やそのブッダの自覚を継ぐ者はシナでは絶えてしまいました。 ⑤チベット約6百万人:中共軍に侵略され、多数の寺院が破壊され、多