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33.世界を変えた日露戦争 ~植民地時代の終わりの始まり~

  今回は、日露戦争を世界がどう見たかについて述べてみたいと思います。 ①日露戦争というと、日本の教科書では1ページか2ページぐらいで余り大きく扱われることはないと思いますが、実はこれは世界史的な大事件なのです。何と言っても外せないのは、世界史で初めて有色人種が白人種を打ち破った戦いだったことですね。しかも、相手はあの超大国ロシアです。 日露戦争が始まる前に、日本が勝つなんて予想していた国は、同盟国のイギリスや仲介役を買って出てくれたアメリカを含めて、どこもなかったのです。 イギリスは自国の防衛体制が整うまでの時間稼ぎの駒ぐらいにしか思っていませんでした。 アメリカは日本がロシアに一矢報いてくれればそれでいいかな、という程度にしか思ってなかったのです。 ②ところが蓋を開けてみると、日本が勝ってしまったのです。 特に、 日本海海戦のインパクトがすごかった。世界最強と言われていたバルチック艦隊を粉砕し、大喝采となりましたからね。この結果は世界を驚かせるのに十分過ぎました。 中でも特に勇気づけられたのは、白人に虐げられ続けていた有色人種の人たちです。 当時炎の妖精がいたら、彼らにきっとこう言ったでしょう、 「言い訳しているんじゃないですか。できないことを無理だって諦めてるんじゃないですか。駄目だ、駄目だ、諦めちゃ駄目だ。できる、できる、絶対できるんだから」とね。 どうせ白人には勝てないと思って諦めていた彼らが、有色人種でもやればできるんだということを、日本の背中を見て感じたわけです。 実際に歴史的な事実として、日露戦争以後というのは、植民地は一つも増えてないのです。 ③さて、有色人種に勇気と希望を与えたこの日露戦争ですが、白人にとってはショックが大きかったのです。 それまでは脅すか殴るかすれば、言うことを黙って聞いていた有色人種が、あろうことか白人に歯向かって、しかも勝ってしまったのですからね。その上相手はあの超大国ロシアです。 白人が有色人種にそれまでにやってきた酷い仕打ちを考えれば、どれだけ日本を脅威に思ったかは、簡単に想像できますよね。下手をしたら日本を中心に有色人種連合が出来て、白人を追い出しにくるなどという可能性も考えられたわけです。 ⑤それでもイギリスは、時間稼ぎ駒程度にしか考えてなかった日本がロシアに勝ってくれたことで、自分の植民地が安泰になったわけ...

32.ロシアとの和平条約:ポーツマス条約

日露戦争1と2で述べたように、陸と海の両方で勝利を収め、アメリカのルーズベルト大統領の仲介でロシアを和平条約を結ぶことになりました。これが有名なポーツマス条約です。 ①ところが、交渉は初めから荒れに荒れます。ロシアが日本が要求した賠償金の支払いを拒否したためです。ロシアの言い分は、「確かに戦闘では押されたかもしれないけれども、俺達の領土は無傷だから負けてないよね。なんで賠償金なんか払わなきゃいけないの」ということです。 日本からすると、ふざけるなっていう話なんですが、当時の日本にはこれ以上戦争を続ける力というものはもうありませんでした。だから、渋々賠償金を放棄しての早期の講話に応じたわけです。戦争継続なんてことになったら、奉天にいる弾薬切れの日本軍は全滅するしかないですからね。 ②しかし、これに怒ったのが日本国民です。国家予算の10倍の戦費と9万人以上の死者という莫大な被害を出してようやく勝てた戦争なのに、賠償金が取れないなんてふざけるなとなってしまい、日比谷焼き討ち事件が起きてしまいます。 まあ、陸軍のおかれたやばい状況なんていうのは、当時の国民は知りませんから、気持ちは分からんでもないですよね。 ③さて、ここまでの解説だと、日本は戦争には勝ったものの外交では負けてしまい、得られたものは少なかったと思ってしまいますけれども、そういうわけではないのですね。日本が得た大きなものは、主に三つあります。 一番大きかったのは朝鮮と満州からロシア軍が撤退したことです。一見、朝鮮半島と満州からロシアが出ていっただけなので、日本にメリットは薄そうに思われます。しかし、そもそもの戦争目的は朝鮮半島から侵略者ロシアを追い出すことだったわけです。つまり、戦争目的は達成されていますから、まあここは日本の勝利と言ってよいと思われます。 次に遼東半島南部の権益をロシアから譲り受けたことですね。ここはもともと日清戦争で日本が清から譲り受けたにもかかわらず、三国干渉でロシアに奪い取られたところですから、ロシアへのリベンジというのも果たせたわけです。 最後に、南満州鉄道の経営権を得たことです。これによって、アメリカとの関係が若干おかしくなり始めるのですが、その辺りの話は別の回で解説をしたいと思います。 ④ここで、勘違いをしてほしくないのですが、あくまで鉄道の経営権を得たというだけの話で、満州自体は...

31.日露戦争② 大きな戦力差を引っくり返した日本海海戦 ~世界に大きな衝撃~

  前回は陸での戦いについて述べました。 今回は海での戦いについて述べたいと思います。 ①日本海海戦は東郷平八郎率いる日本の連合艦隊と、ロシアのバルチック艦隊が戦った世界史に残る有名な戦いです。結果だけを見ると、戦艦8隻を含むバルチック艦隊をほぼ壊滅させ、日本側の被害は水雷艇3隻だけという、大勝利に終わります。しかし、この戦いは決して楽勝と言えるようなものではありませんでした。これは次の表の戦力差を見れば分かると思います。 ②開戦前の日露の戦力比較: 最大動員兵力:日109万人、露208万人。 戦艦:日6隻 (2隻は既に沈没) 、 露15隻 (極東に7隻) 。 海軍力:日26万トン、露80万トン。 鉄鋼生産量:日6万トン、露220万トン。 日露戦争を朝鮮が欲しかった日本の侵略戦争のように言う人がいますが、これは明らかに おかしいですよね。当たり前の話しですが、侵略戦争というのは楽勝で勝てる格下の相手にしかやらないのですよ。普通に考えて、戦力的に勝てそうもない相手に侵略戦争を仕掛けるバカがどこにいるでしょうか。返り討ちにあうのが眼に見えているではないですか。 そもそも日本はロシアと何度も交渉し戦争を回避しようと努力を続けてきました。にもかかわらず、明らかに格上のロシアと戦わざるを得なくなったのは、このままロシアを放っておいたら、遅かれ早かれ日本が侵略されてしまうからです。つまり、日露戦争というのは100%自衛のための戦争だったわけです。 ③では日本は、この絶望的な戦力差をどうやって引っくり返したのか。要因はいくつかありますが、ここでは二つあげたいと思います。 一つは、日本の陸軍が旅順を早期に攻略できたことです。これによってロシアのバルチック艦隊が旅順の極東艦隊と合流することを阻止できました。これによって、4対15だった戦艦の不利の差を4対8にまで縮めることに成功しました。それでもまだ2倍の差がありますが。 ④二つ目の要因は、バルチック艦隊が日本と戦うために世界をほぼ半周するという長距離航海を乗り越えてきたことです。さらにその航海の途中、日本の同盟国であり世界に植民地をたくさん持っているイギリスが、燃料である石炭の供給を拒否するなどいやがらせを行います。また、フランスなどにも外交圧力をかけ、ロシアの艦隊が燃料を補給したら速やかに港の外に追い出すよう仕向けます。こ...

30.日露戦争① ~負け戦になりかねなかった危うい状況~

  ①すでに解説したように、朝鮮国王が自ら政権をロシアに献上したこと(なんと売国奴な国王か)により、実質的に朝鮮はロシアの支配下となります。さらに、領土的にもロシアは朝鮮北部に攻め込み制圧してしまいました。その上、ロシアは満州の兵力を強化し朝鮮にも軍事要塞を造り始め、このまま放っておいたら、日本が危なくなってしまうことは、誰の目にも明らかな状況となってしまいます。これによって、日本はロシアが朝鮮に軍事拠点を完全に完成させる前に、ロシアを朝鮮半島から追い出す必要性に迫られます。 ②しかし、次の表を見れば分かるように、戦力差は余りにも大きく、普通に戦えばまず勝てる状況ではありませんでした。 開戦前の戦力:  日本   ロシア  最大動員兵力 100万人  208万人  戦艦      6隻   15隻(開戦時、極東に7隻)  海軍力    26万トン  80万トン  鉄鋼生産力   5万トン 220万トン この戦力差だけを見たら、後の大東亜戦争よりもひどいですからね。特に鉄の生産量に圧倒的な差がありますね。戦争が少しでも長引けば、物量の差で絶対に勝てません。だから、当時の政府の人たちは、戦争を始める前から、終わらせ方というのを考えて動いていたのです。 ③じゃあ、どういう終わらせ方をしようとしていたか?まず大前提として、日露戦争の戦争目的は、朝鮮半島からロシア軍を追い出すことです。だから、陸軍で朝鮮半島を制圧し、日本が優位に立ったら、すぐに和平交渉に入り早期に戦争を終わらせるというのが、当時の日本政府のプランでした。そのために、開戦前から日本はアメリカに和平の仲介役をお願いしています。 ④日本にとってこの戦いに負けるということは日本の存亡の危機を意味しますから、兵士の士気は高くとにかく必死でした。そのお陰もあって日本軍は多大な被害を出しながらもひるむことなく、朝鮮半島を一気に駆け上がり、なんと満州の奉天までロシア軍を追い返すことに成功します。 しかし、この時点で弾薬は尽きてしまっていて、これ以上の追撃はできないという状況に追い込まれてしまいます。もし、弾切れがばれてしまったら、ロシア軍に反撃されて日本軍は全滅してしまいます。そのため、日本軍は弾薬が尽きたということがロシア軍にさとられないように、「我々の戦争目的は達した。よってこれ以上無駄な争いをする必要はない」と...