①当時の世界情勢を一言で言い表すと、大植民地時代ということになるでしょう。つまり、欧米列強諸国が互いに争ってアジア・アフリカを侵略し植民地を作り、現代では考えられないような酷い非人道的搾取と支配を行っていた時代です。
この当時の白人たちは、有色人種を自分たちと同じ人間だとは考えていませんでした。漫画風に言うと「この世はすべて弱肉強食だ!強ければ生き、弱ければ死ぬ!」、これを一般常識とし、強者が弱者の尊厳・生命・財産を奪い続けていた時代でした。
②江戸末期の時点で、アフリカはほとんど植民地で、アジアで独立国は日本と清国とタイの三カ国だけでした。ただし、清国は、アヘン戦争でイギリスに負けて以後、形だけは独立しているものの、西欧列強から半植民地のような扱いを受けていました。また、タイ王国は、イギリスとフランスの植民地の間にあり両国の緩衝地帯にされていたために、植民地にならずにすみました。いわば運がよかったということなんですね。
つまり、実質的に自力で独立を守っていたのは、日本だけだったのです。これが、当時の日本を取り巻く世界情勢で、何か一つ歴史の転がり方が変わると、日本が植民地化される極めて危機的な状況にありました。
幕府軍と薩長軍が全面戦争していればイギリスかフランスの植民地、南北戦争が起こっていなければアメリカの植民地、日清戦争で負ければ清国の植民地、日露戦争で負ければロシアの植民地になっていたことが十分考えられます。
③次に、明治維新の世界史上の意義を一言で言うと、それまで白人しか持っていなかった西洋近代文明を、有色人種も扱うことができることを実証したということです。
どういうことか?日本以外のアジアやアフリカの人たちは、西洋文明の力、具体的に言うと軍艦と大砲ですね、これを目の当たりにして、「ああこいつらには、もう絶対かなわない、無理だ」と諦めてしまいました。それが普通の反応だったのです。
ところが日本人は、この西洋文明の力を目の当たりにした時に、無理だと諦めるのではなく、「あいつらにできるんなら、おれたちにもできるはずだ」と考えたのです。そして、西洋列強から技術を学び、自分のものにしていきました。現に、黒船来航からたった10年で、坂本龍馬は国産の黒船を作って乗り回していました。この時代の人たちは、本当にすごいですね。
④つまり、明治維新は、有色人種が初めて西洋の近代文明を自分の国に取り入れ、西洋の植民地支配から逃れようとした動きだったのです。そして多くの日本人が知恵を絞り創意工夫し汗と涙と血を流したおかげで、日本は独立を全うすることができたのです。このように自存自衛が明治維新の短期目標でした。次回からその実際について述べていこうと思います。
⑤ちなみに、明治維新には短期目標のほかに当然長期目標もありました。それは、日本が近代化し力をつけたあかつきには、アジアの周辺諸国と協力をして、欧米列強の植民地勢力を追い出し、差別され続けている有色人種の地位の向上を図ろうというものでした。
しかし、日本が強くなって列強の仲間入りをするところまでは上手くいったのですが、周辺諸国との協力ということになると、なかなか困難を極めました。詳しくは後の『脱亜論』で述べようと思います。
やまとこたろう
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