前回まで英国と日本の古代政治思想について述べてきましたが、その中で読者の方から「古代ギリシアの民主政、古代ローマの共和政がありながら、なぜヨーロッパは絶対王政に傾いていったのか?」という鋭いご指摘がありました。にわかには答えられませんので、文化的背景を調べながら何か糸口はないか考えてみようと思います。そこで、まず西洋と日本の古代文学について当たってみることにします。
◯西洋の古代文学と言えば、古代ギリシア・ローマ文学ですね。古代ギリシア・ローマ文学と言えば、ギリシア神話が有名ですね。ギリシア神話は、古代ギリシアの神々や英雄たちの冒険や恋愛、戦争などを描いた物語の集合体です。ギリシア神話は、古代ギリシア人の宗教・文化・思想に大きな影響を与え、西洋文明の基礎の一つとなり、現代の芸術や文学にも多くのモチーフを提供しています。
ギリシア神話には、さまざまなジャンルやテーマの物語がありますが、代表的なものとしては以下のようなものが挙げられます。
・叙事詩:長編の物語詩で、神々や英雄たちの壮大な活躍を歌います。最も有名なものは、ホメーロス(紀元前8世紀)による『イーリアス』と『オデュッセイア』です。『イーリアス』は、トロイア戦争の一場面を描き、『オデュッセイア』は、トロイア戦争から帰国するまでに様々な冒険をした英雄オデュッセウスの旅を描きます。
・神話学:神々や英雄たちの系譜や起源を記述したものです。最も体系的なものは、ヘーシオドス(紀元前8世紀)による『神統記』です。『神統記』は、最初に生まれたカオスから始まり、オリュンポス十二神や人間の誕生までを述べます。
・ 悲劇:舞台上で演じられた物語で、神々や運命に翻弄される人間の悲哀を描きます。最も有名なものは、ソポクレス(紀元前5世紀)による『オイディプス王』や『アンティゴネー』です。『オイディプス王』は、父親を殺して母親と結婚したことを知った王オイディプスの悲劇を描きます。『アンティゴネー』は、兄弟同士で戦って死んだ兄たちの遺体を埋葬することを禁じられた姉アンティゴネーの悲劇を描きます。
・物語:短編や中編の物語で、神々や英雄たちのエピソードや逸話を描きます。最も有名なものは、オウィディウス(紀元前後)による『変身物語』です。『変身物語』は、さまざまな人物が動物や植物などに変身する物語を集めたものです。
◯私評:このような文学によって象徴される古代ギリシャ・ローマ文化は、西洋人としての共通概念を形成し、現代の多くの西洋人の心底に流れていると考えられます。
ご承知のように、現代西洋文明の基礎には、ヘレニズム(ギリシャ人風文化性)とヘブライズム(ユダヤ人風文化性)があると言われています。簡単に言えば、ヘレニズムというのはギリシャ思想であり、ヘブライズムというのは一神教と啓示解釈の伝統のことです。西洋思想の伝統においては、理性と啓示というのは、今日に至っても普遍的なテーマであり続けていると考えられます。
次回は、ヘブライズムについて考えてみることにします。
やまと こたろう
ランキングに参加しています。よかったらクリックお願いします。
↓ ↓
コメント
コメントを投稿